モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
- 作者: ダニエル・ピンク,大前研一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/07/07
- メディア: ハードカバー
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読了!「フリー」に次ぐ、面白さだった。
本書では人間の行動の基礎をなす前提を、コンピュータのOSになぞらえており、このOSを「モチベーション2.0」から「モチベーション3.0」にアップグレードする必要があると説く。ちなみに、モチベーション1.0は、生き残るという、生理的動因が人間のほとんどの行動を決めることを言っている。
そしてモチベーション2.0は、報酬を求める、あるいは懲罰を避けるという動因のことを言っており、ほぼ全ての企業体がこのOS2.0を前提としたルール作りをしているが、21世紀においては3.0へのアップグレードが必要だと主張する。つまり、人を以下の3つの動因によって行動できるようにすることで、はるかに効率的で、付加価値の高い成果を挙げるというのだ。
- 『自律性』〜 自分の人生を自ら導きたいという欲求のこと
- 『熟達』 〜 自分にとって意味のあることを上達させたいという衝動のこと
- 『目的』 〜 自分の利益を超えたことのために活動したいという切なる思いのこと
まずは、2.0が想定以上に人間の活動の阻害要因を作ることを、様々な実験結果を用いて説明していて面白い。一方で、報酬や罰が有効な場面も存在するとしていて、ユニークなのが、「報酬の用い方についての簡単なフローチャート」が入っているところだ。これを使うと、誰かに仕事を頼む際に、報酬を用いるべきなのかどうなのかを判断することができる。
次に、3.0へのアップグレードが必要なこと、そして有効なことを、前述の3つの動因に分けて詳しく書かれている。自分自身もこの3.0方式で、モチベーションを「ドライブ」してもらいたいと感じるし、後輩や部下、発注先と仕事をするときは、よくよく気をつけてなければならないと感じた。仕事に携わる全ての人に一読を薦めたい良書だ。
ところで「自律性」に関わる記述で、「クライアント(客)に仕事時間を請求するような制度は有害である」という箇所がありひどく同感を覚えた。本書の中では、弁護士の仕事が、報酬が時間に基づいて生じていることについて「内発的動機付けを枯渇させ、個人の主導権を奪い、さらには倫理に反する行為すら助長しかねない」としている。
これは、日本のIT業界に横たわる「人月神話」にも同じことが言えるのではと感じた。人月の問題点は、@IT:人月での見積もりがエンジニアをダメにする(前編)に詳しいが、私の中では人月計算によってエンジニアが、オーダーメイドしか作ろうとしない(パッケージ力が育たない)といった問題や、エンジニアのモラルが低下する、創意工夫をしようとしないといった問題の温床になっていると考えており、ひいてはサービス産業の生産性向上の、最も大きな阻害要因となっているのではないかと感じている。「モチベーション3.0」の考え方がIT業界の中にも広まれば、もしかしたら人月計算を見直そうという考えにもつながるのではないかと期待してしまった。
最後に、本書のユニークなポイントは「本書をTwitterで紹介するときはこう、カクテルパーティで紹介するときはこう言ってね」というのが巻末に付いているのだ。でもどうだろな・・・、この文言。ひとまずまったく無視して紹介させていただきました。
- 作者: クリス・アンダーソン,小林弘人,高橋則明
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2009/11/21
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