CloudForce:消えた「大企業活用事例」

Salesforceのカンファレンスイベント、に先日参加してきました。同じイベントに参加していた、知人のITベンダーの方がFacebookに投稿していたメッセージにすごく共感し、深く考えさせられました。

Cloudforceでは、今までIT業界の事例には出てこなかった企業名が出てくる。Cloudを使うことで安価にシステムを持つことができ、大企業と中小企業のITの差がなくなってきているんだと実感。

これ、本当にまさしくそうですよね。

こういったカンファレンスの事例紹介の主役は従来大企業でした。開催側もビックネームを使って、「こんな大手にも採用実績があるので安心ですよ!」というメッセージを言外に漂わせていました。大きな資金力で先進的な取組を行っている企業が、ITを牽引するという構図だったわけです。

しかしクラウドの時代を迎え、大きな初期投資をせずとも立派なシステムを利用できる環境が整いつつあります。ユーザは自分が利用する分だけのコストをかけて、そのシステムを利用することができるわけです。

セッションでもずばり「中堅中小企業における従業員ソーシャルネットワークの活用事例
」というタイトルのものがありました。紹介された事例のうちのひとつは、SBIモーゲージという金融機関でした。住宅ローン証券化を行って、フラット35のローン販売を行っているそうで、上場間近だとか。SBIモーゲージでは、本社と全国に広がる約100店舗のフランチャイルズ契約の代理店と、Salesforce Chatterでつながり、現場と経営がちょくせつ会話する態勢が組まれているそうです。

つまり企業にとって、IT戦略の差別化要素として、資金力が影響力を失いつつあるということです。必要なトラフィック量やデータ量、必要なユーザ数に応じたコストがそれぞれの企業で必要とされるだけで、利用できる機能自体には差が無くなります。資金力ではなく、どれだけ変化への許容力があるか、どれだけリスクをとることができるか、どれだけ合理的な判断をスピーディに下すことができるかということがIT戦略の優越を決めるという場面が増えてくるわけです。

別に原理的には、大企業が不利なわけではなく、企業規模に関係無くなりつつ有るという話です。でも実際には、大企業が不利になってくるでしょうね。しかし本当に大企業は不利なのでしょうか。解決すべき問題を解決すれば、大企業であるということ自体は問題にならないはずです。大企業はいよいよ自らが持つ非効率性にメスを入れなければいけないようになってきているのだと思います。

個人にとっても、大企業の方がより進んだIT環境に身をおける、より先進的なIT戦略に携われるという常識が崩壊して行くでしょう。自分が所属している環境がきちんと合理的な判断を下し、とるべきリスクをとっている企業なのか、クラウドによるパラダイムシフトを理解しているのか、きちんと見極めて行く必要があります。そして、見極める手段として行動していくことだと思います。なんか普通に考えたら、よくわからない理由で却下されそうな提案だけど、自分は合理的だと思うからぶつけてみよう。そういうアクションによって、クラウド時代での対応力が見えてくると思います。