ソーシャルの「次」を考えてみた

起業するならソーシャルの次の波に乗れ【湯川】 : TechWaveに触発されて、ソーシャルの「次」を考えてみた。

弁証法で未来を見通してみる

将来を見通そうと思った時に、面白い考え方がある。「弁証法」という考え方で、私の理解では「進化は螺旋状になる」というものだ。

使える 弁証法

使える 弁証法

例として分かりやすいのが「サーバの分散と集中の進化」である。

サーバの進化を考えた時、最初にメインフレームがあったとする。これはITの歴史の中で、最も集中化がされていたものだ。やがてメインフレームだと、基盤の管理が大掛かりで大変で、メンテナンスビリティが低く、変化に対応しずらいことから分散化が進む。これが、クライアント/サーバ型(C/S型)のシステムで、メインフレームのような巨大なシステムに集中させるのではなく、数多くのサーバに機能を分散させた。またメインフレームの時は、端末はただのコンソールでしかなかったが、C/S型システムではクライアントにも多くの機能が分担された。しかし、C/S型では機能が重く更新の負担も重いため、どんどん軽量化して、処理分担はサーバサイドに再び集約されることになる。クライアントサイドは表示と簡単な入力だけを行うようになった。システムのWEB化がそれだ。一方、サーバサイドは分散化が一般的になると、今度はサーバの数が膨大になり、管理負担が増大してきた。すると、今度は「統合」と名を変えた集中化にゆり戻しが起きたのだ。ブレードシステムがその代表例だろう。そして直近のトレンドは、クラウドとRIAだ。クラウドは統合がより進み、物理的な枠組みの意識をできるだけ排除した仮想化の道をとるようになり、それがクラウドという形で、「物理的には分散しているけど、論理的には集中している」という形を実現する。またRIAは、WEBの格好は維持しつつも、クライアント上の機能を強化させ、インタラクティブなUIや、サーバサービスの呼び分けを実装したりして、かつてのC/S型クライント以上の機能分担を担いつつ、WEBならではの柔軟性を両立させたのだ。

これを図にするとこんな感じだ。
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ファッションの流行のように、技術の進歩も揺り戻しを繰り返しながら、しかしながら決して同じポイントに戻ってくるのではなく、ふり幅を小さくしながら、まさに螺旋状に進化していくのだ。そして、螺旋が集約する中心点が進化の終わりだ。つまりこの例でいうと、サーバもクライアントも無い、処理が一体どこで稼働しているのか、まったく意識する必要の無い世界が、進化の飽和点、終着点なのだろう。それはグリッドコンピューティングというユートピアとして語られる世界であり、電力のように、グリッド(電力網)にアクセスすることで、CPUパワーを享受できるようなそんな世界だ。SFで言えば、電脳コイルの電脳メガネが近未来的だし、さらに進めば、攻殻機動隊の電脳といった感じだろうか。

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ソーシャルが乗る螺旋は?

TechWaveのブログには「検索の時代の次にソーシャルが来た」とあるので、検索とソーシャルの2点と、そして螺旋の終着点の3点をプロットして螺旋を描いてみよう。

この螺旋の終着点はどこだろうか。言うまでもなく、世界中の情報という宇宙の中から、人が知りたい/知るべき情報を、完全に的確に、且つ瞬時に得ることができる状態だ。

つまり図にするとこんな感じだ。
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ここでは、「人手による情報整理/誘導」を左側、「機械/プログラムによる情報整理/誘導」を右側にして、その二つの間で揺り戻しながら螺旋を描くのではないかと考えてみた。つまり、Googleによるページランク検索は、ロボットのクロールによるサイト情報の収集と、より多くリンクされている程、有益なページというランキング判断処理によって、人が得たい情報を的確に、すばやくアクセスするための進化をもたらした。一方でソーシャルは、親しい人が好むものは自分も好むもの、嗜好が近しい人が興味を持つものは自分も興味を持つ、という人の手によって情報が整理、格付けされることで、これまでにない的確な情報収集を可能にした。

過去を振り返ると、Googleのランク検索が流行る前は、Yahooのカテゴリ検索を重宝していた気がする。これはYahooが人手で力ずくで、WEB上の情報をカテゴライズしているもので、まさに「人手による情報整理/誘導」にあたるものである。

つまり、ソーシャルの次は、「機械/プログラムによる情報整理/誘導」に揺り戻しがされるのではないだろうか。

ソーシャルの次は?

では、何が機械的に整理/誘導されるのであろう。

インターネット上の情報は、Googleによってかなりのレベルで構造化され整理されつつある。検索性能は非常に優秀だ。しかし、インターネット登場時から、相も変わらずなものがある。それは検索のインプットがキーワードのみだということだ。検索する先の情報は高度に構造化されていても、そこにぶつける条件情報はシンプルなキーワードでしかない。ソーシャルは、このインプットが「自分が親しい人」や「自分と嗜好が近い人」になったわけだが、次はこれがもっと機械化されるのではないだろうか。

例えば、モバイルや各種センサー、画像認識技術の向上によって、人の活動や状態、思考等がデータ化され、言葉にできない情報がインプットになる、というのはあるかもしれない。電子マネーの利用履歴や、GPSを使って判別したロケーション情報、さらには体重や体調といった情報がインプットになり、食事の情報が検索されるとか。

次の時代に乗るには、ユーザ自身の情報をどう構造化するかが、キーワードになるかもしれない・・!