ユニクロ経営書

一勝九敗 (新潮文庫)

一勝九敗 (新潮文庫)

ユニクロのファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏がユニクロの経営について語っている。会社の歴史や、各戦略についての解説が語られている。失敗に終わった経営戦略についても詳しく語られているのが非常に面白く、本書で何度も出てくる「失敗に学ぶ」というのがきちんと実践されていることの現れでもあると感じた。


セブンイレブンの鈴木敏文氏そう*1だが、こういう経営者は常識はずれな行動を起して、うまく効果を挙げている。柳井氏も同様で、95年10月に全国紙で「ユニクロの悪口を言って100万円」という広告を出したという。集まった「悪口」は1万通弱でほとんどが品質へのクレームだった。これを品質向上の到達水準とみなし、「非常に役に立った」という。まさに失敗を生かした事例と言える。


他にも、様々なユニクロの舞台裏のエピソードが語られている。例えば、ミュージシャンの山崎まさよしが登場したCFで、フリースを着てギターを弾く本人が登場し、「ミュージシャン27才」とテロップが流れ、彼自身の言葉でしゃべり、最後に「ユニクロのフリース 15色 1900円」とコピーがでる、というのは記憶に残っていることだろう。実はカメラに映っていないところで、テリー伊藤山崎まさよしと会話していて、自然な言葉を引き出すようにしていたのだそうだ。


こうした広告の仕事の中で感じた、海外のクリエイターと日本のクリエイターの違いが語られていたり、柳井氏の企業組織論について語られていたりと、薄い文庫本ながら、柳井氏の経験・考えが凝縮されている一冊だ。

*1:[asin:4833450070:detail]